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「文子!よしなさい!!」
「大丈夫よ。空襲警報はなるけど爆撃を落とさず帰って行くことも多いじゃない。すぐ行って帰ってくる」
母やまわりの大人たちは止めたけど、私はタカを括っていた。
防空壕と家はそんなに離れていなかったし、お手玉がどこにあるか検討はついていたから暗闇でも目が慣れればすぐ取って帰って来れるはずだった。
「結局、お手玉を見つけて家から出ようとしたときどこかで落ちた爆撃の爆風で私は柱に頭をぶつけ気を失いました。気がついたときには家には火が回っていて崩れた柱の下敷きになって身動きが取れない状態でした」
高田さんが苦しそうな顔をする。
「それでも私は雪子を恨んだり、取りに戻ったことを後悔していません。お手玉の中の小豆はいざとなったとき食糧になるし、何よりまだ幼くて甘えたい盛りの雪子が不憫でならなかった」
雪子が大好きだった父はもういないし、兄たちからの手紙もしばらく途絶えていた。
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