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どうやら私には前世の記憶があるらしい。
何度も何度も繰り返し見る悲しい夢をなぜ見るのか分からなかった。
でも彼の姿を一目見たとき、夢ではなく前世の記憶だったんだと確信した。
「文子さん…?」
営業先の会社のロビーで、スーツ姿の男性が私を見てそう言った。
現世の私の名前は玲香だ。
それなのに私の口から出た言葉も
「正一さん…」
だった。
服装と髪型は違えど、姿形は最後に見た正一さんそのものだった。
きっと彼の名前も正一ではないのだろうと彼の連れのスーツ姿の男性の表情を見て思った。
目からは一筋の涙。
それからしばらく、私たちはお互いを見つめ合うことしかできなかった。
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