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微動だにしない私たちを見かねて正一さんの同僚が彼に耳打ちすると、正一さんが近づいてきてスーツの内ポケットから名刺を取り出した。
「今度ゆっくりお会いしたいです。連絡をください」
そう言って同僚だと思われる男性とエレベーターに乗って行った。
「大丈夫っすか?」
私の顔を覗き込んで後輩の高橋が神妙な面持ちで聞いてくる。
現世の私は大手下着メーカーの総合職でバリバリ働いていて、後輩には厳しかったし涙を見せたことなど一度もなかった。
「元彼ですか?」
「…違う。けど、大切だった人よ」
「でもあの人先輩の名前間違ってましたよね?」
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