第二章

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今日は家でゆっくりしよう、と声をかけてくれた都築さん。どこにも出かけないことになったものの、匡将さんと西野さん、島沖さん、小倉さん、御堂さんは仕事が入っているということで出かけるため、支度をするのに今はここにいない。 私は自傷行為をする危険性から遠ざけられるようになったため、料理を作るときは誰かが必ず側にいる。元々お皿を出したりとみんなが手伝ってくれていたけど、キッチンにいる人は二人になり、私を一人にはしなかった。 「日和さん、ありがとうございます」 「行ってくる」 5人分のお弁当を作って各自で持っていけるようにし、玄関でお見送りをする。みんながいなくなって、私は都築さんと多田さんとみあとお留守番だ。明日はみあの病院だけど、都築さんだけで行ってくれることになった。 「ひめさん、昨日通販で見たものが、今日の夕方には届くみたい。一緒に開封しよう」 「はい」 「あ、うん。わかった、伝えておくね」 途中、都築さんは電話で席を外したものの、すぐそばで話をしていた。電話を終えてこっちにきた都築さんは少し悲しそうな顔をしていて。 「ごめんね、日和。日和のアパートのものは、一部を除いて回収できなかった」 「いえ、大丈夫です…」 「回収ができたのは、ぬいぐるみとクッション。あの女の家にあったみたい」 大切だったものはあの女に盗られていたらしい。それを気遣ってか、新しく買い替えようと言ってくれるが、あのぬいぐるみは私が辛いときに側にいてくれた。手放すのは苦しい。 「その、状態が良くないんだ」 「都築さん、状態って…?」 「うん、見る?」 「はい」 写真を見せてもらい、多田さんと二人でのぞき込む。回収ができたと言う思い出の品は、酷いものだった。とてもじゃないけど、直せるほどのものじゃない。 「あの、捨てる前に、会いたいです」 きっと、私がいらないと言えば、匡将さんたちは捨ててくれる。でも私は、このぬいぐるみとクッションを最後に抱きしめたい。私を支えてくれたお礼をしたい。 「わかった。今日、持って帰ってきてくれるから」 「ありがとうございます」 午前中はのんびりとお昼寝をしながら過ごし、午後はかなり早くに届いた通販の品を3人で開封して整理をした。匡将さんによって必要なものを買い与えられ、十分だと思っていた。けれど部屋にあった小説や漫画まで買い直せと言われたので、ありがたく買い直させてもらった。
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