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ぐっすりと眠って、すっきり目の覚めた翌朝。
「ふ、ん、ぅぅ」
ぎゅっと抱きしめられている私は、その腕から逃れようと必死になっていた。
なにせ、今日は月曜日。経営しているフロント企業へ出勤予定なのは社長である匡将さん、秘書の西野さん、護衛兼運転手の多田さん。
都築さんはみあの病院のためにお休みを取っている。島沖さんも今日は別件とのことで、出勤しないらしい。今日、一緒にお留守番なのは都築さんと小倉さん。御堂さんもお医者様だからお仕事。
早く起きなければ全員の分の朝食もお弁当も作れない。それが理由で頑張って脱出を試みているのに。ぎゅうぎゅうと締め付けるかの如く腕が巻き付いていてなかなか離れない。
「匡将さん、匡将さん!!」
昨日の朝、起きるときは起こせと言われたばかり。匡将さんを揺さぶって声をかける。
「まだはやい…」
「私は起きたいです…、というより、起きます。起こしましたからね!?」
匡将さんの一瞬、緩んだ腕からようやく脱け出すことができ、顔を洗いに洗面所まで移動しようとしたときだった。
「ぅえ!?」
ベッドから立ち上がろうと縁に腰を掛けていたところを、また腕が伸びてきてベッドへ戻された。
「日和、ちゃんと起こせ」
「ん、ゃ!!」
耳を甘噛みされて、息を吹きかけられる。明らかに遊ばれているのがわかる。くすぐったくて、身をよじるように逃げるけど、がっちりと後ろから抱えられているので逃げられなかった。
「いや、じゃないだろう」
「っ、起きたいので、離してください」
流されまい、と意志を主張すれば、あっさりと開放してくれた。それがなんだか拍子抜けで。匡将さんは私を離した後、起き上がったので私も洗面所へ今度こそ移動した。
「おはよう、日和」
「おはようございます、都築さん」
都築さんがすでにリビングにいて、朝のニュースを見ていた。
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