第二章

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「あくまでも、彼らは正義のもとに行動していた。それが人を傷つける行為であったとしても、相手は悪人だから、傷つけることは悪いことじゃない。むしろそれが、彼らにとってのやるべきことだった。あの場所では誰もが、悪人を罰する正義のヒーローなんです」 最初に娯楽費用を、次に一番の出費である食費を、削る余地があるところは全て削った。 引き落とし用の口座で一括管理をしていたけれど、その口座からお金は一切引き落とせないから各会社からすぐに引き落とせなかった連絡と振込用紙の入った書類が届いた。 一か月目、手元のお金で払うことができた。 二か月目、お金をかき集めても、全部は無理で。水道だけはなんとかなったから、支払った。 三か月目、急に、前月分はきちんと支払った水道を含めて、なぜか止まった。 お金がない状況だったから、通信費が賄えるうちに、スマホで検索し原因を調べたけど、わからずじまい。 思い切って電話をしても、相手にされず。生活するのに問題だし、水に関しては命にかかわるから、と思って直接各会社に行っても、アポがないからと冷たく追い払われるだけ。なんとかこぎつけても、嫌味ばかり言われて心がしんどくなるだけだった。何度も訴え続けて、ようやく調査中です、と言ってもらえて。 ようやく、元に戻ると、そう信じて。 調査結果の報告書が来るのを心待ちにして。 やってきたのは、高額な請求書。 一緒に入っていた請求理由の書かれた書類を、できる限り汚さないように月明かりの下で何十回と読み込んでも。全く理解ができなかった。 これは何だと連絡をして理由を聞いても、その書面通りの理由としか回答をしてもらえず、納得ができないから今度は弁護士に持って行った。 その弁護士は、話を聞き始めたそばから、私の話を遮った。何の解決にもならない無関係な話と、どうせあなたが悪いんでしょ、というようなことばかり繰り返すので嫌になり、納得したふりをして帰る旨を告げた。すると、相談料として高額料金を請求されてしまった。 ちゃんと調べて、その弁護士のいる事務所が一回目の相談は、どんな相談でも無料だと知ったから来たのに。 この件は除外だと言われ、それでも渋れば法的措置をとると言われた。 「みかたなんて、うそばかり。誰だって、権力者に頼まれたら断れないんだって、知りました」 こんなの詐欺だと思い、弁護士連合という組織に連絡を取ろうとした矢先に、スマホを解約せざるを得ない状況となったため何もできなかった。 「警察も、弁護士も、ううん、お仕事をちゃんとしている人は、きっと助けてくれるって…。勝手にどこかで信じてたんです」 高額な相談料を支払うお金がなかった私は、疎遠になった両親に恥を忍んで頭を下げた。額を床にこすりつけて、プライドも何もかもを捨てて、お願いしますと一週間、毎日欠かさず土下座をして頼み込んだ。 嫌な顔をされても、水をかけられて追い返されそうになっても。 「家族は、最後まで味方だと思っていました」 諦めないで、どうしても必要だからと粘った結果。ようやく貸してもらえたお金、そのお金と月の食費全てを合わせて支払った。 「まあ、信じた私がばかだったんですけど」
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