第二章

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愛とは、信じるだけ無駄なもの。 びた一文、お金にならない。 空腹を口渇感を、愛があるからと言って満たすこともできはしない。 世の中、すべてがお金、あとは権力。 「みあ」 「にー」 誰かを信じるのは、絶対裏切られるからやめたほうがいい。 匡将さんは、私に愛を伝えてくれるけど。それはまやかしにすぎない。私は、愛される価値がない人間だとすでに証明がされている。きっと、匡将さんは私みたいなのが珍しいか、最期の、素敵な思い出作りをしてくれているだけ。 「あっ、みあ!!だめ!!」 突然、みあが膝から降りてすごい勢いでリビングに向かっていった。慌てて後ろを追おうとして足がもつれて転んだ。その間にみあが部屋の前で大きな声で鳴いてしまって。大きな音を私も立てたから、お仕事の話をしているという匡将さんたちがこちらの様子を見に来た。 「日和さん?!」 最初に顔をのぞかせた西野さんに廊下で座り込んでいるのを見られた。驚かせてしまったようで、すぐに身体を起こすのを手伝ってくれた。 「すみません!!」 わざわざ手伝ってもらったこと、邪魔をしてしまったことがどうしても耐えられなくて、謝罪の言葉を口から紡ぎだす。 「謝らないでください、大丈夫ですよ」 「日和、怪我は」 「す、すみません。怪我もないです」 西野さんと匡将さんによって、他の人が待っているリビングまで連れてこられた。廊下は寒かったから、リビングが暖かくてほっとしたのは言うまでもない。 「日和、身体冷えてる。これ使って」 「すみません…」 「ここは、ありがとうって言ってほしいな」 匡将さんにソファーで横になっていろ、と言われ寝かしつけられて。身体が冷えていることに気が付いた都築さんからは、暖かそうなブランケットが渡された。 「あ、ありがとう、ございます」 つい謝ってしまって、それを訂正された。 「ひめさん、俺とお話しましょ」 「ぜひ」 どうやら話し合いは終わっていたようで、私が横になってもまだ全然余るソファーにやってきた多田さん。彼は寝ている私の頭のほうへ座って、話をしようと誘ってくれた。 そんな多田さんの目が真っ赤で、どうしたんだろうとは思ったけど、聞くことはしなかった。
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