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「あの…?」
「………………怯えるな」
「………」
「お前を傷つけるつもりはないと言っただろう」
「は、い…」
恐怖を感じているのは事実だ。生きるも死ぬも全てがこの人に管理される。この人が私を必要ないと思えば平気で捨てられる。私にできることは媚を売ってせいぜい捨てられないようにすることだ。
「来い」
「っあ」
引っ張られるように洗面所から連れ出されて、足早にさっき西野さんに会った玄関まで戻ってきた。玄関から一つひとつ、部屋を紹介されて中を見せてくれた。
「ここが食事をした場所、一番使うから覚えろ。こっちは風呂場とトイレ。トイレはもう一つあるからそっちを使ってもいい」
「は、はい」
どこか食事の時よりも雰囲気が優しい匡将さんは、私の手をがっつりと繋いでいる。器用に片手だけでドアの開け閉めをしながら、ぶっきらぼうな声だけど、丁寧に教えてくれる。
「あの、入ってはいけない部屋とか、ありますか…?」
「ないから安心しろ。ここは俺の部屋だ、寝室はそこ。日和の部屋はその向かいのそこだ」
部屋も一回いっかい、きちんと内装を見せてくれる。さっきまで感じていた恐怖はだんだんと薄らいでいた。
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