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喉が渇いた、と言えばすぐに飲み物を渡してくれて、思ったよりも怖くない人かもしれないと思っていたころだった。突然、離れたところで電話をし始めた匡将さんの雰囲気が鋭いものに変わった。さっきまでの穏やかな雰囲気など霧散してしまっている。
「なに?わかった、護衛を増やせ。それからみあはこちらに」
みあ、と聞こえて何かされる、と恐怖してしまう。まだ私は彼のことを信用していなかったらしい。
「来い、今からお前を抱く」
「っや!!」
雰囲気が怖いままにこちらに手を伸ばされて、反射的にそれを拒絶してしまった。マズイ、そう思ったけれど思ったところで意味はない。
「日和、誰に歯向かっている?」
「す、すみませ、」
恐怖した身体は言うことなど聞くわけもなく、近寄ってくる匡将さんから離れようと後退りをする。後ろ向きで走るなんて器用な真似はできない、これは背を向けて逃げるしかないと、腹をくくる。だって、怖すぎる。
「日和、今なら優しくしてやる」
「や、だ…、いや…」
どんどん身体は後ろへと下がり、ついに壁に当たってストンと座り込んでしまう。そんな怯え切って、下を向いている私の顎を掴んで上へと向かせる匡将さん。
「やはり躾が必要か」
「い、や…、こわ、い」
匡将さんの言っている意味が理解できない。わかっているはずなのに、頭が理解しようとしてくれない。
「恨むなら、恨めばいい。だが俺に歯向かうな」
「そんなの、めちゃくちゃ、すぎる、っん」
突如、口づけられ息ができなくなる。
「あっ、んんっ」
口内を荒々しく動き回る舌、だんだんと意識が朦朧として、訳が分からなくなる。
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