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2 世界がお前を殺そうとしている
「立て、ここもじき危険になる」
不審者は悠子を再び乱暴に立ち上がらせて歩かせた。
「さっきのトラック、救急車とか呼ばなくてもいい……んですか?」
「近所が勝手に通報するし、勝手に野次馬が集まって勝手に警察が来る」
「というか、なんで、おじさんは」
──まるであのトラックが来ることをわかっていたみたいに……。
喉元まで出かかった言葉を、悠子は言えなかった。まさか、そんな未来予知的なことができる非科学的な人間なんてこの世にいるわけがない。
「おじさん、何者なんですか? 私たち、どこに向かってるんですか?」
「近くの公園。そこは目下のところ──」
不審者はちらりと、コートから懐中時計を出した。とても古ぼけた前時代的なねじまきを使っていることに、悠子はひどく驚いた。
「──あと十三分は危険がないことになっている」
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