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「──やっと見つけた!」
背後から声がした。
悠子が振り返ると、細身をしたポニーテールの、中年の女性が、こちらに駆け寄ってくるのが見える。
「安心して、近所に住んでるの。救急車を呼んだからね」
悠子は、女の言葉を受けて声を出して泣いた。中年の女性が肩を優しく包む。
「ねえお姉さん。服装を見ると、どこかお出かけだったんじゃない? 待ち合わせの人はいる? 一度その人に会ったほうがいいかもね」
「い、いやです、離れたくない……」
「大丈夫よ、私が救急車に一緒に乗るから。病院の場所も連絡してあげる」
「本当に……?」
「約束する。さあ、いきなさい」
悠子はふらふらと立ち上がり、重くなった足を引きずって歩き出した。
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