5 それをお前に渡すつもりで

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「──やっと見つけた!」  背後から声がした。  悠子が振り返ると、細身をしたポニーテールの、中年の女性が、こちらに駆け寄ってくるのが見える。 「安心して、近所に住んでるの。救急車を呼んだからね」  悠子は、女の言葉を受けて声を出して泣いた。中年の女性が肩を優しく包む。 「ねえお姉さん。服装を見ると、どこかお出かけだったんじゃない? 待ち合わせの人はいる? 一度その人に会ったほうがいいかもね」 「い、いやです、離れたくない……」 「大丈夫よ、私が救急車に一緒に乗るから。病院の場所も連絡してあげる」 「本当に……?」 「約束する。さあ、いきなさい」  悠子はふらふらと立ち上がり、重くなった足を引きずって歩き出した。
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