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「最後に、ひとつ、頼みだけ……聞いてくれ……」
久遠は手を空中にさまよわせた。
「ゆ、指輪を……」
涙のままに、悠子は二回うなずいた。すぐに指輪ケースから指輪を取り出して、もう悠子の顔すらまともに焦点を合わせられない久遠の手に持たせた。
そして自分自身の細い手を、久遠に差し出す。
「ああ……ありがとう、ありがとう……悠子……死ぬ前に、これだけはいつか、言いたかったんだ」
久遠は最後の力を振り絞って、血濡れた手で持ったリングを、悠子の薬指にはめ込んだ。
「結婚してくれ」
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