1 彼氏じゃお前を救えない

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 ──少し遅れます?  いやいや、遅れるとしたら少しどころではなさそうだ。  ──トラックにはねられそうになりました?  心配してこちらに来てしまうかもしれない。  ──トラックにはねられそうになったら見知らぬおじさんが助けてくれました?  論外だ。今度は久遠くんが不審者を殴ってしまう。  ぐるぐると迷っているうちに、不審者が悠子のスマホを取り上げてしまった。 「ちょっ、返してよ!」  不審者は悠子のスマートフォンのバッテリーカバーを外して、取り出したバッテリーを足で踏んづけた。 「ああっ!」  SIMカードも抜いて、どこかに持っていた折りたたみのはさみで真っ二つにしてしまう。 「やめて! なにするのおじさん!」 「これだけは言っておく」  不審者は他人のスマートフォンを文字通り足蹴にしたにも関わらず、平然とした表情で、立ち上がれずにいる悠子を見下ろした。 「彼氏じゃお前を救えない」
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