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   ねえ、すごい傑作できたから見て、とスマホを秀和に渡そうとしたわたしは、さっきまでぽかんと開けていた口元を、右手で押さえて潤ませた目を見開き、年甲斐もなく頬を真っ赤に染めるという、長年の付き合いでも初めて見る彼の珍しすぎる顔芸を目の当たりにする。 「やっばいですよ美織さんそれ、すごい口説き文句……」 「は?」 「なんかむしろ俺がプロポーズしてもらったみたいな気分だ。嘘だろ、絶対デレないことで定評のある美織の口からそんな言葉が漏れるなんて。天変地異来る? いや、来られたら困る。せっかくこの人生、新プランに乗り換えたばっかなのに」 「……乗り換えって、スマホですかあなたの人生は」  真っ赤な顔のまま、頓珍漢な言葉をぽろぽろとこぼし続ける秀和に、思わずわたしは噴き出す。 「いや、並のスマホよりすごいでしょ。このプランBにくっついてきた、もはやこれはスーパーシークレットオプション? うおおヤバい、死神様マジでありがとう!」 「死神に礼言うってどう言うことよ……。まあ」  なんかもうよくわからないけれど。秀和が楽しそうだから、いいや。 「オプションでもいいよ、もう」  ――好きです。  十二年前に彼からもらったその言葉を、今度はわたしが彼に渡してみた。
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