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「そんなの、」
答えなんか、決まっている。
わたしは言った。
「受けて立つ」
――ただ、あなたが連れて行かれるのを無駄に五分延ばしただけであっても。
手術台の上で眠り続ける、秀和を見つめる。
ただ、あなたが失われる苦痛を味わう時間を五分増やしただけであっても。
勝手に、彼の人生をわたしがこの手で弄ることになるのであっても。
それを彼が望んでくれるか、喜んでくれるか分からなくても。
この選択に責任なんてきっとどうやったって取れない。
――それでも。
わたしは、砂時計を受け取った。
その瞬間、砂時計はすうっと透明になり、わたしの掌の中へと吸い込まれていった。
◇
何事もなかったように、再びオペ室の中の時間が動きだす。あの男の姿はもうない。
「先生」
傍から藤原さんの声がする。壁に掲げられた時計を見やる。午後18時55分。
あと五分。
ジャスト19時までに。
見つけるんだ。
「ごめん、もう一度見せてね。秀和」
絶対に助ける。
どんな神の奇跡だろうが、悪魔の気まぐれだろうが。
この300秒であなたを、必ず。
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