きっと

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「西田ってさ、好きなやついんの?」  3日前の帰り道。ひとりで校門を出た美萌咲(みもざ)を、クラスメイトの沢渡修斗(しゅうと)が追いかけて来た。 「な、なんでそんなこと聞くの?」  クラスの人気者に問われ、美萌咲はたじろいだ。好きな人がいるなんて、誰にも話したことがないのに。  沢渡は頭を掻き、キョロキョロと辺りを見回した。通学路にはまばらに下級生の姿が見えるが、会話が聞こえそうな距離には誰もいない。 「なんでって……そんなん決まってんじゃん。気にならないなら聞かないし、気になるってのはさ、つまりそういうことだろ」  怒ったような顔で早口に言う沢渡は、美萌咲をからかっているようには見えなかった。 「西田は漫画のキャラにしか興味ないとか言うやつもいるけどさ、それホント?」 「あ、えっと……」  確かに二次元の男の子たちはカッコいいけれど、だからといって現実の男子を好きにならないわけじゃない。ちゃんと返事をできないもどかしさで、美萌咲の両手が胸の前でもじもじと動いた。 「好きなやつ……いんなら教えてよ」  真面目な顔で真っ直ぐに見つめられ、美萌咲が口を開きかけたとき。 「おーーい、沢渡! 何やってんだよ!」  背後から、彼を呼ぶ大きな声がした。  ふたり同時に振り返ると、クラスの男子が数人、校庭を囲むフェンスの向こうで手を振っている。沢渡といつもサッカーをしている男子たちだ。
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