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「どの味にしますか?」
ショーケースにずらっと並んだアイスキャンディーを振り向いて、男の子が聞いた。一片の疑いもなく買うと信じている幼さに、思わず笑ってしまう。
私の好みで選ぶなら、ピンクに白い水玉だけど……
その隣に並ぶ鮮やかな黄色と緑の組み合わせは、沢渡がよく着ているシャツを思い出させる。
「その黄色いの……味はレモンですか?」
「そうです。甘ずっぱくておすすめですよ!」
試食でもらった二粒はとても美味しかったけれど、沢渡はいつも走り回ってるから、チョコやバニラより、さっぱりした味の方が食べやすいかもしれない。
「じゃあその、レモン味のをください」
美萌咲が指差すと、男の子は「ありがとうございます」と言って、エプロンのポケットから小さなメモ帳とペンを出した。
「棒に入れる文字は何にしますか?」
「あの、サワタリ……って、入れられますか?」
漫画じゃあるまいし、「好きです」なんてとても言えない。沢渡も、直接的な言い方はしなかった。好きな人を聞かれているのだから、棒に彼の名前を書いておけばその意味は分かってもらえるだろう。美萌咲はそう考えた。
「もちろんです! お掛けになって少々お待ちください」
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