ずっと、

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ずっと、

 ふと視線を感じて顔を向けると、校門のところに女子が立っていた。見覚えのある、水玉模様のワンピース。西田美萌咲(みもざ)だ。そう認識して、沢渡(さわたり)修斗(しゅうと)はグラウンドを蹴った。  胸がドキドキするのは、二時間続けたサッカーのせいじゃない。彼女がわざわざ夕方の校庭に戻ってきたのは、「あの返事」のために違いないと思ったからだ。  自分は汗臭いかもしれない。そんな心配をして、沢渡は美萌咲の3歩手前で止まった。 「西田……」  どうしたの、とも、返事は、とも聞けずにいる沢渡に、美萌咲はにっこり笑って、パステルブルーの小さな紙袋を差し出した。漫画本が入るくらいの大きさで、受け取るととても軽い。 「これ、返事」 「え……っ?」 「ありがとう。すごく、嬉しかった」  恥ずかしいのか、少し困ったような笑顔でそう言うと、美萌咲はくるりと踵を返した。 「じゃあね!」  小さな背中に揺れる、栗色のポニーテール。振り返らずに走り去る彼女の後ろ姿が夏の夕空に見えなくなるまで、沢渡は震える手で紙袋を握りしめたままグラウンドの隅に立っていた。
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