常夏の向こうへ

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 ハッと飛び起きたら、全身に嫌な汗がじとりと伝っていた。  見上げれば、曇り空。目の前には、雄大な海。ひらひらと潮風になびくセーラー服の三角タイ。傍らには、黄ばんだハガキの入った透明な瓶。  わたし、ちゃんと戻ってこられたんだ。    悪い夢から醒めた時のように、安堵した後。次から次へと、涙がとめどなくあふれでてきた。   これから先、わたしは何度も、わけもなく涙がこぼれてくる夜を過ごすと思う。幸せそうな家族を見るたびに、どうしてわたしばっかりって世界の全てを呪いたくなる。  だけど、それでも。  この胸の痛みは絶対に失くしちゃいけないものだって、ちゃんと分かったから。  立ち上がって、ボトルメッセージを海の中に放り投げた。 「ばいばい、常夏の国」 【常夏の向こうへ 完】
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