常夏の向こうへ

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「「ようこそ、常夏の国へ!!」」 「えっ……?」    ぱちぱち。まぶたを開く。  目の前には、ひまわりみたいな笑みを咲かせている女の子と男の子。二人とも真っ白で天使みたいな服を着ている。知らない。この子たち誰? 「常夏の国? なにそれ」 「お姉さんの名前は?」 「わたしの名前は、舞だけど」 「まいさん。大変だったね、すごくすっごく哀しい思いをしたんだね」  女の子にふわりと抱きしめられた。あったかい、ゆたんぽみたいで安心する。  見上げれば、胸のすくような青い空。綿菓子みたいな白い雲。脇には立派なヤシの木がそよ風にさらされて揺れている。  わたしは、楽園を絵に描いたような景色の中にいた。 「でも、もう大丈夫。ここに招待されたからには、もう哀しむ必要はないよ。ここは常夏の国、哀しみのない世界だから」  ここは常夏の国。哀しみのない世界。  空には、まん丸のお日さまが二つ照っている。 「もう……哀しまなくてすむの?」 「うん! 食べるものにも、遊ぶのにも、永遠に困ることはないよ。だからほら、そんな悲しそうな顔をしてないで僕らとあそぼ?」 「で、でも……ここ、どこなの? わたし、帰らないと、おばあちゃんが心配するかも」 「また、悲しい思いをしにいくの?」 「胸が張り裂けそうな思いをしにいくの?」  どこまでも透き通ったつぶらな瞳たちに見つめられて、喉がつまった。帰ったところで、わたしを迎えてくれるお父さんとお母さんはもういない。 「わたしはもう……哀しいのは、いやだ」
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