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家族そろって静岡へ
3月の大空襲の後も東京の空襲は続き
4月13日、ついに荒川区尾久(おぐ)の家が焼け
15歳の栄依子、12歳の妹の登志子は、
父、藤平の生家を頼って静岡に疎開させられました。
その時の話は「春、荷車に乗って」で書きました。
そこは天竜川に近い小さな宿場町。
山影に広い茶畑が広がり、
天竜川のきれいな水が豊富な豊かな土地でした。
東京の下町で生まれ育った栄依子には
御伽噺のような風景です。
藤平の生家「篠原」は庄屋も兼ねる大きな農家でした。
金持ちではありませんが
豊かな土地がありました。
未だ60代のおばあさん(藤平の母)が切り盛りしています。
山影の土地は畑や田んぼには向かないが
天竜川の恵みで土は肥えているので
柔らかい上質の茶葉を育てるのに向いています。
茶畑の一角では、
宮内省に納める「マスクメロン」も栽培していましたが
一番の収入源は、溜池を利用した養鰻業でした。
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