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「彼女が生まれたのは、かれこれ2000年くらい前かな。ずっと彼女を観察していた」
「私から見て決して幸福と呼べるものではなかった。人々から嘲笑され、罵られ、物は奪われ、裏切りの遭い、磔にされ、生きたまま火に焼かれ、切り裂かれ、はらわたを貪られ、骨はしゃぶられた」
「一番ひどかったのは、錬金術によって造り出された“光の闇”を受けた時だった。皮膚はただれ、肉は腐り、片目は落ち、黒い川で朽ちていった」
「それは君が彼らに与えたものだ。知っているか? 君とこの世界が何と呼ばれているか」
「もうこれ以上ないというほどのありとあらゆる苦難と試練が彼女に降りかかった。それを何百回、何千回と繰り返していた。しかし……彼女の心は常に穏やかだった。誰のせいにするわけでもなく、誰を恨むこともなく、ただひたすらささやかな夢だけを抱いていた」
「ささやかな夢ね……マスター、スロージン・フィズを」
「命を育むことだ。どんな絶望の淵にあっても、その夢だけは忘れていなかった。そしてやっと今、その夢が叶おうとしている。彼女が創る新しい世界はきっと素晴らしいものになると信じている」
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