XYZ

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 再びバーテンダーはシェイカーを手に取ると、材料を入れ、リズミカルにシェイクした。 「エックス・ワイ・ジーです。ライトラムベースにキュラソーとレモンジュースを組み合わせたものです」    私の前にグラスが差し出された。  透き通った碧玉(へきぎょく)のような透明色で、店内のスポットライトの光を優しく反射していた。  レモンの涼しい香りが、心の(けが)れを洗ってくれるようだった。  私は一口、口に含んでみた。 「これは素晴らしい味わいだな、さわやかな酸味と、まろやかな甘味がラムを優しく包み込んでいる……」 「XYZ、アルファベット最後の三文字。未知と秘密と終末、そしてこれ以上のものはないという意味が隠されているよ」 「今の私にはとても感慨深いカクテルだな……」  バーテンダーがグラスをタオルで綺麗(きれい)()きながら、語りかけてくれた。 「カクテル言葉をご存じでしょうか?」 「カクテル言葉か、知らないなあ」 「エックス・ワイ・ジーのカクテル言葉は……“終わりは始まり”です」  街を覆う深い暗闇は、明日の夜明けが待ち遠しくて、たまらないようだ。  さあ、始めようか、終わりを告げるラッパを吹き鳴らそう。
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