XYZ

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――カラン、カラン―― 「……いらっしゃいませ」 「よう、来たな」  軽く手を上げて、「こっち、こっち」と誘う男の姿があった。私は片手に杖を持ちながら、びっこを引きつつ、ゆっくりとバーカウンターに(おもむ)き、男の隣の席に腰かけた。 「何になさいますか?」  バーテンダーからメニューが差し出された。 「そうだな……プリンセス・メリー、これにしようか」 「珍しいな、お前がそんな甘たるいカクテルを注文するなんて。いつもはバーボンばかり頼んでいるのに」 「ちょっとしたお祝いさ、これから始めることの」 「……もう終わりにするのか?」 「ああ、俺ももうこんなだしな。それに……新しい希望を見つけた」
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