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「まさか誕生日に、こんな目に合うとはな」 赤と青のコードを見つめ続けていた坂本がつぶやく。 「あんた、誕生日だったんだ。今更だけど、おめでとう」 「あ、ありがとうな。 あー、こんな事になるなら、美波ちゃんに告っておけば良かったなー」 美波は私たちの同期だ。 美波は美人で、同期に限らず、先輩後輩からも人気がある高嶺の花的存在だ。 広報課に所属していて、広報誌やイベントでその美しい容姿を惜しげもなく披露している。 「俺、思うんだけどさ、美波ちゃんって俺に気があるんじゃないか? 俺の勘って結構当たるんだよな」 私と美波は同期で仲が良いから知っているんだけど、今度、美波は結婚する。 相手は同期の結城だ。 結城は長身のイケメンだから、美波とは美男美女で、とてもお似合いだ。 今、坂本本人に伝えて、ヤケをおこされても困るので黙っておくけど、あんたの勘、外れたね。 「やべぇ。時間がない。赤か青、どっちを切るか決めないとな」 「うーん、どっちだろうね。私の今日のラッキーカラー、緑だったけど」 「っていうか、椎名だけでも逃げろ。今からでも遅くはない。 あとは俺だけで何とかする。任せろ、俺の勘は結構当たる」 「いや、最後までいる。私だって警察官だもん。それに、あんたの勘、信じられないし」 そんな会話をしているうちに残り10秒を切ってしまった。 「よし、決めた。赤だ。赤を切るぞー」 残り1秒、坂本は赤のコードを切った。
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