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その後
「パーン!」
タイムリミットとともに店内に鳴り響く音。
爆弾は何ともない。タイマーはゼロで止まっている。
音がした方を振り向くと、店の入り口付近には3つの人影。
そのうち2人は、クラッカーを手に拍手をしている。
もう1人はビデオカメラを回している野球帽の男。
よく見るとクラッカーの1人は、この店の店主で、もう1人は美波だ。
「驚かせて悪かったな」
野球帽の男が帽子を取りながら謝る。
現れたのは結城だ。
「は?どういうことだ?」
1人、事情を呑み込めていない坂本がつぶやく。そんな坂本に結城が事情を説明する。
「いやぁ、実は今度、俺と美波、結婚するんだけど、それを椎名に言ったら、お祝いしてくれるって言うじゃん。
それで、坂本が誕生日だから一緒に祝おうってなって。
だったら、坂本にサプライズを仕掛けようってなって。
同じ部署の人とかにも言ったら、みんな協力してくれるって。
爆弾処理班の人なんか、練習用の模擬爆弾貸してくれるって言うし。
この店は、俺たち2人で良く来てたんだけど、店長に相談したら、あっさりオッケーで、隠しカメラも置かせてくれた。
俺は今日、非番だったから撮影係。
この後は、この店で貸し切りパーティーだぞ」
「ごめんね、坂本君。許してっ」
両手を合わせて拝みながら上目遣いで謝る美波を見て、許さないでいられる人がいるんだろうか。
「ま、まあ、爆弾が本物じゃなくて良かったよ。
騙されたのは、別にいいんだけどさ。
それより、なんだよ、結城かよー。
俺の決死の告白は不発に終わったのかー」
ガックリと項垂れる坂本。
そんな小さくなった背中に向かって、心の中で語り掛ける。
『坂本、ショックだよね。その気持ち痛いほど分かるよ。
私も失恋したからね。
私の好きな人はね、昔から、何に対しても真剣に取り組む人なんだ。
それを横で見てたら、いつの間にか好きになってた。
今日だって、やったこともないのに必死に爆弾を解除しようとしてたんだ。
その人、美波が好きなんだって。
なんとなく、わかってたんだけどね。
実際、聞くと現実を突きつけられるようで、ショックだよね。
でも、私の場合はまだ、その人結婚してないから望みはあるかな』
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