その後

1/1
前へ
/6ページ
次へ

その後

「パーン!」 タイムリミットとともに店内に鳴り響く音。 爆弾は何ともない。タイマーはゼロで止まっている。 音がした方を振り向くと、店の入り口付近には3つの人影。 そのうち2人は、クラッカーを手に拍手をしている。 もう1人はビデオカメラを回している野球帽の男。 よく見るとクラッカーの1人は、この店の店主で、もう1人は美波だ。 「驚かせて悪かったな」 野球帽の男が帽子を取りながら謝る。 現れたのは結城だ。 「は?どういうことだ?」 1人、事情を呑み込めていない坂本がつぶやく。そんな坂本に結城が事情を説明する。 「いやぁ、実は今度、俺と美波、結婚するんだけど、それを椎名に言ったら、お祝いしてくれるって言うじゃん。 それで、坂本が誕生日だから一緒に祝おうってなって。 だったら、坂本にサプライズを仕掛けようってなって。 同じ部署の人とかにも言ったら、みんな協力してくれるって。 爆弾処理班の人なんか、練習用の模擬爆弾貸してくれるって言うし。 この店は、俺たち2人で良く来てたんだけど、店長に相談したら、あっさりオッケーで、隠しカメラも置かせてくれた。 俺は今日、非番だったから撮影係。 この後は、この店で貸し切りパーティーだぞ」 「ごめんね、坂本君。許してっ」 両手を合わせて拝みながら上目遣いで謝る美波を見て、許さないでいられる人がいるんだろうか。 「ま、まあ、爆弾が本物じゃなくて良かったよ。 騙されたのは、別にいいんだけどさ。 それより、なんだよ、結城かよー。 俺の決死の告白は不発に終わったのかー」 ガックリと項垂れる坂本。 そんな小さくなった背中に向かって、心の中で語り掛ける。 『坂本、ショックだよね。その気持ち痛いほど分かるよ。 私も失恋したからね。 私の好きな人はね、昔から、何に対しても真剣に取り組む人なんだ。 それを横で見てたら、いつの間にか好きになってた。 今日だって、やったこともないのに必死に爆弾を解除しようとしてたんだ。 その人、美波が好きなんだって。 なんとなく、わかってたんだけどね。 実際、聞くと現実を突きつけられるようで、ショックだよね。 でも、私の場合はまだ、その人結婚してないから望みはあるかな』
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加