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【 第三話: 一緒にくっついて寝る? 】
俺たちはそんな宮古島の美しい景色を眺めながらしばらくドライブした後、目的地のホテルへ到着した。
「ホテル到着したよ~」
「うわぁ~、南国感あるすてきなホテル~」
車を駐車場に停めて、ホテルの入り口の美しい花々を見ながら、俺たちはホテルのフロントへと向かった。
「あの~、二人で予約した佐藤ですけど」
「え~、佐藤浩さんと佐藤マジカさんですね。伺っております。新婚旅行ですか?」
「えっ? いやいや、そ、そうじゃないです……」
すると、マジカは何を思ったのか、テレビでの情報からだと思うが、突然こんなことを言った……。
「私たち、恋人同士です。『婚前旅行』っていう旅行だと思います」
「マ、マジカ……、婚前旅行って……。(何かの変なドラマとか見過ぎ……)」
「そうですか~、どうもおめでとうございます。旧館の302号室になります。ごゆっくりお過ごし下さい。」
「あ、ありがとうございます……」
俺はマジカの言葉に動揺して、自分でも顔が明らかに赤面しているのが分かった。
部屋へ向かうため、エレベーターホールへ行くと、そこには数名の家族客がエレベータを待っていた。
エレベーターが到着し、先にその数名の家族客がエレベーターに乗り込み、次に俺が乗り込んだ。
そして最後にマジカが乗った瞬間、明らかにエレベーターが一気に沈み込んだ……。
『ガタン! ビィーー!!』
そう、マジカの重みでエレベーターが積載オーバーになってしまったのだ……。
すると、先に乗り込んでいた家族の子供が、突然、こんなことを言った。
「あのおねえちゃんがエレベーターに乗ったら、揺れて変な音が鳴ったよ」
「(こらっ、シー!)」
「でも、このエレベーター500Kgまでいいのに、あのおねえちゃんが乗っただけで、何で音が鳴ったの?」
「(だから、いいの! シー!)ごめんなさいね~」
「す、すみませんでした……。俺たち降ります……」
子供っていうやつは、何でも疑問を持つ、とても素直な生き物である……。
俺たちは二人とも顔を真っ赤にしながら、エレベーターを降りた。
「3階なら、階段で行こうか?」
「うん……」
マジカもさすがに恥ずかしそうにそう言うと、二人で階段で部屋へ向かった。
部屋の鍵を開けると、部屋の中はとても薄暗かった。
俺はそれでも、ワクワクしながら部屋のカーテンを開けると、そこは――、
オーシャンビュー……、
ではなく……、壁ビューだった……。
「な、何でこんなところに壁があるんだ……(隣の新館の壁かぁ~)」
「あれ~? テレビでは窓から海が見えるホテルが映ってたよ……」
「あははは……(やはり俺の給料ではオーシャンビューは無理だったか……。安いにはそれなりの理由があるんだな……)」
「ねぇねぇ、ヒロシ。ベッドも小さいの一つだけだよ」
「えっ? うそ? ええーーっ!? まじか~……」
「で、でも、マジカはこれでいいよ。ヒロシと近くでくっついて寝れるから」
マジカはそう言うと、恥ずかしそうに顔を赤らめ、手を顔の前でパーにして表情を隠していた。
「ご、ごめんね、マジカ……」
「今日は一緒にくっついて寝れるね」
「あぁ、よろしくね……」
「うん。うふふふっ……」
マジカは、基本、広かろうが、狭かろうが、俺とくっついて寝たいのだ。
今回は、それが狭かっただけなんだろう……。
しかし、俺にとっては、そのマジカの気の利いたやさしさが、実は一番嬉しかった。
「(もっと、頑張って働いて、広いベッドで寝れるようにしないとな……)」
マジカの無邪気な笑顔を見ながら、俺はそんなことを思っていた。
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