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【 第五話: 二人の星空旅行 】
俺たちは夕方近くまで海を満喫し、夕食はホテルの沖縄料理を堪能することになっていた。
俺はそこでもマジカにサプライズを用意していた。
それは、このホテルならではの人数限定の特別サービスで、ホテルの屋上で夕食が取れるというものだった。
「うわぁ~、屋上でヒロシと一緒にご飯食べれるなんて、うれしい~」
「ねぇ、すごいでしょ?」
「うん。ロマンチックな気分になっちゃう。すてき~」
「部屋はそれなりだったけど、この屋上での夕食は実は幸運にも限定5組を引き当てたんだ」
「そうなんだ~。私たちラッキーだね」
「うん、ついてるね」
食事が運ばれてきて、徐々に辺りが暗くなってくると、テーブルの上の明かりだけとなり、雰囲気もより一層増してきた。
そして、デザートを食べ終わる頃、周りの明かりが一斉に消えて、真っ暗になった――。
「きゃ、明かりが消えちゃった」
「うん。マジカ、ゆっくりと空を見てごらん」
「空を? うん、分かった……、うわぁ~、すご~い。きれい~」
「沖縄の空はきれいだろ?」
「うん、すご~く、きれい~。沢山のお星様が見える~」
「ほら、あそこ見てごらん。いくつもの星が川のようになっているところ」
「うわぁ~、すご~い。あれは何?」
「あれはね、天の川って言うんだよ」
「へぇ~、あれが天の川って言うんだ~。初めて見るけど、とってもきれい~」
「東京ではなかなかこんなきれいな星空なんて見えないから、一度、マジカをここに連れてきてあげたかったんだ」
「うふっ、ヒロシってやっぱりやさしいね」
「お金はかけられないけど、これが俺からの星空のプレゼント」
「うふふっ、今日のヒロシ、やけにロマンチストね。ありがとう」
「あはは、でも、こうして見ていると、何だか夜空と一体になっているみたいで、吸い込まれそうな気持ちにならない?」
「うん、なる。ヒロシと一緒に宇宙を旅しているみたいな気分になる」
「はは、宇宙を旅しているか、マジカもうまいこと言うね。ほんと、まさに宇宙を飛んでるみたいだね」
「ヒロシ、こんな素敵な星空旅行に連れてきてくれて、ありがとう」
「うん。マジカも一緒に来てくれてありがとう」
「うん……」
暗くて俺にはよく見えなかったが、マジカの声から、おそらくこの星空に感動して、マジカは目に涙を浮かべていたんだと思う。
俺もこんな綺麗な星空を今まで一度も見たことはなかった。
しばらく俺たちは時間を忘れて、その満天の星空を見つめていた。
そんなロマンチックな気分になったからではないとは思うが、その夜、部屋の小さなベッドでマジカはこう言った。
「私、小さなベッドの方がいいかも」
「狭いのに?」
「うん。だって、この星空の下で、ヒロシの一番近くで一緒に居られるから」
そう言うとマジカは、嬉しそうに俺の懐へ潜り込んできた。
マジカの髪からは、この美しい宮古島の夜のように、爽やかなシャンプーのいい香りが漂っていた――。
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