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【 第六話: 謎のトンネル事件 】
宮古島での最終日、俺たちは灯台の絶景スポットとして有名な、『平安名崎灯台』を訪れてみた。
そこで、緑の美しい公園の中に、人が一人入れるくらいの岩とコンクリートで出来たトンネルのような面白そうな穴を見つけた。
俺は走って、先にそのトンネルの中に入ると、マジカも後から追いかけてきた。
「あっ、何か穴がある」
「待って、ヒロシ。置いてかないで」
「ははは、先にトンネルの中に入ってるね」
「もう待ってよ~、ヒロシ」
マジカがその穴の入り口に来た時に、向こう側の出口から、俺はマジカを呼んだ。
「マジカーっ! 聞こえるー?」
「ヒロシー! マジカを置いてくなんてヒドーイ!」
「あはは、マジカもそのトンネル抜けておいでよー!」
「うん。そっちで待っててねー!」
マジカは恐る恐るその暗いトンネルに身を屈めながら入って行った。
俺は悪戯して、出口から出ると、トンネルの上の芝生を走って、また入り口の方へ向かった。
マジカがトンネルの出口付近に来ると、マジカは俺を探しているようだった。
「あれ~? ヒロシ~、いないの~?」
「マジカこっちだよー!」
「えっ?」
「後ろ、後ろー!」
マジカが今度は出口から反対の入り口の方を見ると、俺の影を見つけた。
「もう~、ヒロシのいじわる~、マジカ、こわいの~」
「こわくないよー! こっち、こっち」
「もう~、ヒロシ待って~」
マジカがまた出口から入り口の方にトンネルを抜けていると、俺はまた入り口から出口にトンネルの上から向かった。
「あれ~? またヒロシどっか行っちゃった~」
「マジカー! 今度はこっちこっちー!」
「もう~、ヒロシ私こわいの~、グスグス……」
「(あっ!? ヤバ! 泣かしてしまったかも?)あっ、マジカ待ってて。今そっちに行くからー!」
俺はトンネルを潜ってマジカのところまで行った。すると、やはりマジカはトンネル入り口でしゃがみ込んで泣いていた。
「うぅ、グスッ、グスッ……」
「マジカ、ごめん。ごめんよ」
俺がそう言うとマジカは大きな声で泣き始めた。
「うわぁ~ん、うわぁ~ん……」
「ごめん、ごめん。マジカ、こわかったの?」
「うわぁ~ん……」
「悪かった。いたずらしちゃって……。そんなにこわかった?」
「うぅぅ……、何かトンネルの先のヒロシの影を見ていたら、ヒロシがどっかへ行っちゃうような気がして……」
「どこにも行かないよ、マジカ……。ごめん、悪かった……」
「マジカを置いていかないで……」
「置いていかないよ、安心して」
「ほんとに? ほんとに、マジカを置いていかない?」
「うん。約束する。絶対に、マジカを置いていかない。だから、泣かないで」
「マジカ、こわかったの……、ヒロシがどこか遠くへ行っちゃうんじゃないかって……」
「大丈夫。どこへも行かないよ。いつでもマジカの側にいるよ。だから、安心して」
「ほんと? どこにも行かない?」
「うん。絶対にどこへも行かない。いつでもマジカと一緒にいる。ほんとにごめん、マジカ」
「う、うん……。マジカを離さないでね」
「離すもんか」
「うぅぅぅん……」
そう言うと、マジカは俺にしがみ付き、俺のシャツを強く握って、震えて泣いていた。
マジカは知らない土地で、一人で置いて行かれることに恐怖を感じてしまったのかもしれない。
俺のちょっとした悪戯だったが、マジカにとっては、とても深刻なことだったんだと思う。
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