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「あらやだ、大変」
「新郎の母親が遅れるワケにはいかないデショ? 桃花はボクが連れて行きますから」
「そう? 大丈夫?」
「必ず連れて行きます」
「じゃあ、お願いしてもいいかしら?」
「はい」
お母さんの草履の音がドアから離れて行く。わたしは見えるワケもないのに目でその音を追いかけた。
やがて何の音も聞こえなくなった後で、あの甘い声がした。
「桃花」
茶色いドアの向こうから、明人の声。いつからそんな声になっちゃったの、明人。昔はそんな声でわたしの名前、呼ばなかったくせに。
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