第10話_爪痕残る身体

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大学へ向かった全員が、速やかに葉月(ハヅキ)宅へ引きあげた。 蒼矢(ソウヤ)はすぐさま寝室のベッドに寝かされ、葉月が具合を診る。 「…少し青痣になっちゃってるところがあったけど、それ以外大した怪我はしてないみたいだね。熱が出てるから、目が覚めたら解熱剤を飲ませておくよ」 大体の処置を終え、たすきを解いた葉月は他三人のいる居間に戻り、状態を伝えた。 葉月のチェックが終わるまで無理やり待機させられていた(アキラ)が蒼矢の元へすっ飛んでいき、他の面々も後に続く。 「(アオ)兄…」 (レツ)らが2階へ上がり寝室に入ると、陽は涙目になりながら、蒼矢のベッドにかじりついていた。 烈は部屋の入口から蒼矢の様子を伺う。陽が目にしないかと一瞬ぎくりとしたが、首と鎖骨にはきちんと包帯や医療テープが施されていて、ひそかに胸をなでおろした。 ふいに肩を軽く叩かれ、後ろを向くと葉月が視線で自分と影斗(エイト)を呼んでいた。そのまま三人は寝室を離れ、階下へ降りる。 廊下を折れると、葉月は二人へ振り返った。たいていいつも穏やかな笑顔を見せている葉月が、下向き加減に険しい表情で腕を組む。 「…蒼矢なんだけど…ちょっと様子がおかしいんだ」 「具体的には?」 「…催淫薬みたいなものを、飲まされているかもしれない」 「……!」 その言葉に烈は目を見開くが、返す言葉がすぐには見つからない。 代わりに影斗が淡々と返す。 「あるだろ、あんな状態じゃ。…まだ切れてねぇのか?」 「うん…どういうものをどれだけ身体に入れたかわからないから、起きて聞けたら聞いてみるけど…」 「熱はそのせいか?」 「…多分。今日はうちに泊めるよ。一応、蒼矢の親御さんには僕から連絡しておくから」 「了解。ちょっと一服してくるわ」 葉月と影斗で話が進み、ひと通りその場が完結すると、影斗はさっさと離れていった。 二人の会話をただ黙って聞いているだけで終わった烈は、立ち位置から動けず、自分の足元を見つめていた。 葉月はうつむいたまま突っ立っている烈を見ると、その正面に立ち、彼の両肩をポンポンと叩いてあげた。 「…自分のせいだと思ってるなら、それは間違ってるよ。僕が蒼矢の相談を聞き出せなかったことにも一因があるし、あの子自身の油断もあった」 「葉月さん…」 顔を起こすと、葉月はいつもの笑顔で、でも目には力を込めて烈を見ていた。 起こってしまったものは仕方がないから、切り替えていくしかない。…次につなげればいい。 「…ありがとう。俺、帰ります」 「うん。何かあったら連絡するね」 「了解」 烈はいくらか持ち直したか表情を落ち着かせ、蒼矢と陽がいる部屋に戻る。
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