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影斗が変身する『セイバーオニキス』は、攻撃を得意とするほか『放逐』という固有能力を持ち、『転異空間』に入り込んだ[異界の者]を空間から追い出すことができる。一度追い出されれば[異界の者]は再侵入することはできず、またセイバー側も現実世界へ戻れるようになるため実質"防衛"扱いだが、"成功"したとは言えないため、影斗がこの能力を行使することは稀だ。
今回は、動けない蒼矢を護りながら単独であの[侵略者]を相手することは難しいと判断して能力を使ったにすぎない。
影斗は深く息を吐き出す。
「…これだけは言わせろ。蒼矢、お前脇が甘いよ」
「…!」
うって変わって影斗は、蒼矢に真剣な視線を向けていた。
「葉月に少し事情聞いた。昨日お前がああなった原因は、全部お前自身だぜ。危機感が足りねぇよ」
「……」
「…一人で出歩いてる場合じゃねぇだろ。葉月のそばに居ろよ」
「…はい」
影斗は蒼矢を責めるように言葉を並べた。でも彼の言はもっともで、蒼矢は小さく頷き、睫毛を伏せた。
そんな仕草を見ていると、影斗は自分を殴りたくなってくる。
…言ってから後悔しかない。昨日あんな目に遭った奴に…傷ついてる奴にかける言葉じゃない。
二人が少し沈黙したところで、コーヒーが運ばれてくる。
一口すすり、少し気持ちを切り替えた影斗が、そう言えばと蒼矢に声をかける。
「さっき立ち止まってたじゃん? …あの時、何考えてたんだ?」
「!」
蒼矢は少し目を見開いて影斗に視線を合わせるが、すぐにそらしてうつむく。その様子に、影斗は蒼矢の顔をのぞき込むようにうかがう。
「なんだよ。…俺には言えない内容か?」
「そういう訳じゃありません…けど、言いたくありません。…影斗先輩には解らない」
視線を合わせないまま、蒼矢はそうつぶやいた。
影斗は軽くため息を漏らしながら、頬杖をついた。
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