第12話_傷つき合うふたり

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帰り道、影斗(エイト)蒼矢(ソウヤ)はほぼ無言のまま神社に着く。 「お帰り蒼矢、影斗も」 「いや俺は帰って来てねーよ。勝手にカウントすんな」 「ご飯作るよ?」 「いらねぇよ。お前俺の何なんだよ」 笑顔で二人を出迎えた葉月(ハヅキ)に突っ込みを入れつつ、影斗は蒼矢が玄関をあがる様子を見守っていた。 「…蒼矢」 影斗に呼ばれた蒼矢が振り返る。 「『お前』の[敵]は、『俺たち』の[敵]でもあるんだからな。…忘れんな」 そう言い残すと、影斗は自分で玄関の戸を閉めた。擦りガラス越しに見える影斗のシルエットが、すぐに消えていく。 蒼矢は影斗が去っていった後をしばらく見つめていたが、向き直り、黙って葉月宅の奥へ入っていく。 葉月はその背中には何も言わず、彼の後をついていった。 その日の夜、微熱を出した蒼矢は早めに休み、翌朝まで何事もなく時間が経った。 葉月が蒼矢を起こしに寝室へやってくる。 「具合どうかな?」 「大丈夫です」 「良かった。湿布も替えようね」 蒼矢は襦袢を脱ぎ、背中を向ける。腰にかけてまで点々と出来た痣は、まだ痛々しく残っていた。 葉月は湿布を貼り直してあげる。 「もう痛みはあまり気になりません」 「そう? じゃあ今日は色々とちょっと手伝って貰おうかな」 昨日のことを受けて、葉月は蒼矢が暇しないように何か考えていたようだ。 「着替えたらおいで。朝ご飯食べよう」 そう言うと、葉月は先に部屋を出ていった。 蒼矢はベッドの端に置かれた着替えに手を伸ばす。 「…あ」 今日は洋服が置いてあった。しかもご丁寧に、首が隠れるハイネックタイプだった。 蒼矢はいそいそと着込む。葉月の体型は烈よりは自分に近いので、ほぼ違和感のないサイズだった。 …葉月さん、洋服持ってたんだな… そう頭の中でつぶやき、ありがたさと申し訳なさを感じた。 朝食が終わると、葉月は蒼矢に境内のはき掃除をやって貰うことにした。それが終わると洗濯物干しと、中庭の水まきをお願いする。 「ゆっくりやってくれていいからね」 そして居間には、数十センチの高さになるほどの大量の古書を積み上げた。その光景に、蒼矢は目を輝かせる。 「……!」 「すごいでしょ。君がしばらく来ない間にまた増えちゃったよ」 古書集めが趣味の葉月は、家の裏にある蔵に膨大な量の古書を所蔵していて、同じく読書好きな蒼矢は、彼と知り合ってから暇を見つけては通い、読ませて貰っている。その読書量と集中力は並外れていて、本をピックアップする行程で大体蔵の中で読み始めてしまうため、葉月はたまに蒼矢が来ていることを忘れてしまうくらいだった。 ひと通り頼まれたことが終わると、蒼矢は読書にいそしんだ。
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