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第13話_五色交わる
昼前に、烈と陽が連れ立って様子を見にやってきた。
「蒼兄…っ!!」
「あ、待った」
葉月は制止しようと思ったが言い出すのが遅く、陽は蒼矢に飛びついた。蒼矢は陽を受け止めてよろけ、葉月がそれを支える。烈は無言で陽をむしり取った。
「…二人とも、心配かけてごめん」
全員居間に揃うと、開口一番に蒼矢は二人に頭を下げた。陽はブンブンと勢い良く首を横に振る。
「謝んなよ!! 俺こそっ…俺、なんも出来なくてっ…、鉱石見た時、マジどうしようかとっ…」
「あの時はああするしかなかったんだ。…もうしないよ」
蒼矢にそう優しく言われ、陽は下向き加減で頷き、まぶたを袖でぬぐった。
陽は烈と従兄弟で、彼を通じて蒼矢とも幼い頃から交流があり、長年の付き合いから自分に対する態度が粗野になっている烈に比べ、変わらず接してくれる蒼矢にはよく懐いている。
最たるつながりは勉強面で、高校受験の時から現在のテスト前勉強に至るまでずっと蒼矢の世話になっていて、彼には尊敬の念と絶大な信頼を寄せている。また、蒼矢の容姿にも単純に惹かれているようで、弟分という立場にしてはやや行き過ぎた愛情表現になることもあるが、不器用で不慣れなりにも気遣ったり大事に扱ってみせている。
『セイバー』の一人でもあり、選ばれてからまだ日は浅いが素質は確かで、各人の立ち位置をそれなりに理解できており、蒼矢のこともサポート出来るよう努力している。しかしまだまだ戦闘に不慣れなので度々空回ってしまい、結局当の蒼矢や葉月に逐一指示を貰いながら動くよう、念を押されている。
「…身体の具合はどうなんだ?」
「ああ。少しだるいけど、昨日よりはいくらか良いかな」
烈が本題を切り出し、葉月からも交えて簡単に現状を伝える。
「――了解。…葉月さん、ちょっとトイレ借りる」
話が終わると、烈はすぐに席を立ち、居間から立ち去った。
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