第14話_拠点への急襲

3/3
前へ
/58ページ
次へ
[(カズラ)]は気を失いかけている蒼矢(ソウヤ)を一旦解放し、再びその首を腕ですくい上げると、見せつけるように自分の胸の前へ持ってくる。 「興味深いことがわかったぞ。この石は俺がここに来た時に光り始めた。だがこいつから取ったら、光が消えた」 [蔓]の手が蒼矢の腹部に伸び、シャツを胸上までめくる。露わになった上半身に、青い水滴文様の刻印がくっきりと浮かんでいる。 鉱石を持つ手が下腹部から左胸を撫でながら伝い、刻印の上に来ると、触れた鉱石がほのかに青く光り出す。 [蔓]はすぐに刻印から鉱石を離した。 「[侵略者()]に反応するということは、この石が『セイバー(お前達)』の力の源だろう。しかし身体から離れると[俺]に反応しなくなる。…おそらく変身できないわけだ」 そしてもう一つ、セイバー側しか把握していない事実がある。 『転異空間』を作るために鉱石を握ったセイバーから近い場所に居るセイバーは、実は握らなくても一緒に変身・移動できる。が、その効果はセイバー以外の人間にも及び、起動元のセイバーから距離が近過ぎると、例外無く一緒に転送されてしまう。セイバーの活動を秘匿する意味もあったが、そもそも転送先での命の保証が出来ないため、転異空間へ生身の人間を送ることは絶対に避けなければならなかった。 そして今、蒼矢は起動装置を奪われているため、[蔓]の言う通りセイバーに変身することはできない。 同時に、人間のまま転異空間へ転送される状況に置かれてしまっていることになる。 対抗手段を塞がれたセイバー達は、[蔓]の言動をただ黙って見ているしかなかった。 [蔓]が、起動装置を握った手を高らかに挙げる。 「これは、"髙城(タカシロ) 蒼矢"が欲しい俺には目障りだ」 そう言うと、手が強く握られる。 ゴキッと固い物が割れる音がし、手が開かれると、鉱石だった青い破片が粉々になって降下し、トップが空になった銀色のペンダントが床に投げ捨てられた。 「……!!」 蒼矢の左胸から、刻印が薄くなって消えていく。 その一瞬後、蒼矢の意識が落ちて頭が傾き、四肢から力が抜けていった。 一連の挙動を見させられていたセイバー達は、全員が血の気を失っていた。 [蔓]は、動かなくなった蒼矢を腕に担ぐ。 「こいつは貰っていくぞ。奪い返したければ[異界]に来るんだな。来ることが出来ればの話だがな」 [蔓]はセイバー達に向かって無機質にそう告げると、蒼矢と共にその場から姿を消した。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加