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陽だまりを掴む
━━でも、目の前にいる人は違う。
下唇を噛むように小さくはにかみ笑うと白い歯が控えめに覗く。清潔感のある容姿と整えられた髪。爽やかという言葉がぴったりの私の想い人・貴宏さんと私は今向き合っていた。
「それで...大事な話って...」
高級レストランに身の丈を合わせるため着てきたピンクのドレスの裾を引っ張った。
何の話なのかな...別れとかじゃなければいいけど。
二人で挟んだ淡いキャンドルに目線を移して、彼の言葉を待った。
「あぁ...」
曖昧な返事を漏らして貴宏さんは紺の長ズボンのポッケから真紅の箱を取り出した。パコンと開いた箱の中身がキラリと光る。
「僕は、貴女と付き合い始めて、二年が立ちました」
緊張の色がはっきり表れ、おどおどと言葉を辿った。私はそんな貴宏さんをじっと見つめた。
「僕は、貴女の優しさに、無邪気さにたくさん救われました。貴女という存在がどれだけかけがえのない存在なのかよく身に沁みました」
え...。
私の表情は一変した。初めて聞いた言葉に戸惑いが強かった。
「貴女に出会えて良かった。今度は僕が貴女を救いたい。」
「僕と出会う為に産まれて来てくれてありがとう。結婚してください!」
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