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夢を漂っていた私は、肩を揺すられて意識が浮上した。夏のジリジリと焦がす日差しが頬を刺している。
朝だ。けど、まだ目を開けたくない。
うなるだけで起きようとしない私に、業を煮やした母の声が届く。
「いい加減にしなさい」
起こされて私は機嫌が悪かったが、母の声は私よりもっと不機嫌であることを物語っていた。仕方ない。
私はもぞもぞと寝返りをうち目をこする。
「あー学校行きたくない」
なおも愚図る私に母は呆れた声をもらした。
「なに言ってんのよ。いやだわ、この子寝ぼけて。もう夏休みじゃないの」
言われて思い出した。そうだ、もう学校は休みになったのだ。では、なぜこんなに早く起こしたのか。
抗議しようと目を開けて、今寝ているのが自分のベッドではないのに気付く。
そしてもう一つ思い出した。ここは家じゃないのだ。
「シャキッとしてよ。ほら、おじいちゃんの家に着いたんだから降りなさい」
私は起き上がると、低い天井にぶつからないように気をつけて、うんっと背伸びをする。後部座席の窓からは、青空が広がっているのが見えた。
勢いよく車から飛び出すと、草の匂いのする空気をめいっぱい吸い込む。
うん、気持ちいい。
早くしなさいと母が大声で呼ぶので、急いでカバンを持って後を追った。
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