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大学に入りたての頃、急に広がった行動範囲の広さに浮かれて、 当時の仲間内で、バイだと打ち明けた事があった。 それぞれ色んな地方の出身で、性格も様々な奴らだったのに、反応はだいたい2パターンで、 〝ちょっと無理〟と引くか、 〝じゃあ俺も有りなの?〟と好奇の目で見るか、 その二択だった。 〝仲間内で気まずくなるじゃん〟と面と向かって言われた事もあった。 そんな事を言う奴らと友達ごっこなんかする気ねぇよ そう思って、自分からシャットアウトした。 こんな性格だから、特に誰とも打ち解ける事も無く、 腐る程の人の波の中で、自分だけが溶け残った異物の様に感じた。 その年の夏頃、駒場 と知り合った。 偶然、講堂で隣に座っていて、 スマホの充電が切れそうだと言う奴に、たまたま持っていたモバイルバッテリーを貸してやったのがきっかけだった。 ひょうひょうとしたその雰囲気に、こいつはどんな反応をするのか、と興味が湧いて打ち明けてみた。 「え、そうなの?ふーん。」 奴は、至極どうでも良さそうにそう言った。 その後も、特に接し方が変わる事も無くて、その無関心さが、逆に心地いいと思った。 駒場を通じて、芳賀や真木ともつるむ様になった。 芳賀は駒場よりは落ち着いた性格で、たまに駒場と一緒に悪ノリする事はあっても、基本的には冷静で客観的。 真木は、姿形は俺とは正反対で、ゴツゴツした筋肉質の体つきをしていて、性格は粗暴で気性が荒い。 皆それぞれタイプは違えど、それなりにクズなので、ろくでもない真似をしては笑い合っていた。 あれからもう少しで1年。 真木とはいろいろあって揉めた末に、顔すら合わせなくなった。 結果的に、真木と仲が良かった芳賀や駒場とも距離を置く様になっていた。 そして、つい最近。 俺はまた、駒場とつるむ様になった。 年上の〝恋人〟との進展の無さに悶々と悩んだ挙句、客観的な意見を聞いてみたくなった俺は、飲みの場で駒場に相談した。 駒場の、あの無関心さに安心出来る様な気がした。 少し冷静になってみたら、完全に血迷っていたと思うけど。 駒場は、やっぱり無関心そうに、でもしっかりと俺の話を聞いてくれて 〝それは普通だ〟 と当たり前の様に言った。 結局のところ、紐解いてみれば極単純な事で、何の問題もそこには無かった。 自覚した事が功を奏したのか、ただの時間の問題なのか、俺と浅科さんは、 それ以前よりはずっと、深い部分で触れ合う様になった。
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