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温度の低い湯を膝に当てた。痛い。ほとんど水にして膝を冷やした。だが膝にだけ当たるわけもなく、あちこちが冷えていく……
最後に手を散々冷やして、暖かいシャワーを浴びた。
(あ、バスタオルは?)
そっと浴室のドアを開けると脱衣室に置いてあったから急いで体を拭いた。この間、ご両親を待たせっ放しだ。
そして、また固まる。お父さんはかなり…… 相当な大柄な人だ。石尾は引き締まった体形。なのに置いてあるのは明らかにお父さんのパンツとランニングとパジャマ……
(これ? これ着てあそこに座るの?)
凛子ちゃんが石尾が出た気配に気づいたらしく脱衣室に来た。
「ごめんなさい、ラフな方がいいと思って。健ちゃんのズボン、ちょっと手洗いして今お母さんがドライヤー当ててるから」
それを聞いて(申し訳ない!)と慌てる。急いでパジャマを着て居間にもどった。ラフ過ぎて途中で落ちそうになるパジャマのズボンを両手で握りながら。
入った途端にお父さんが立って頭を下げた。
「すみませんっ! 申し訳ないことしました!」
「い、いえ! こちらこそ」
ついズボンから両手を放して頭を下げた。ズボンがストンと落ちた。
お母さんが散々お父さんに小言を言い、凛子ちゃんはお父さんを睨みつけている。石尾は真っ赤になったまま、いたたまれない。
「お客さんに火傷負わせるなんて! しかもお茶を口から出すなんてみっともないったら! すみませんねぇ、本当に」
「お父さん、健ちゃんに謝ってよ!」
「い、いや、さっき謝っていただいたから」
「このまま帰られても文句言えませんよ!」
(いえっ、目的果たしてないから帰れませんっ)
辛うじて口には出さなかった。
「まったく。来た早々お風呂に入ってもらってお父さんのパジャマなんか着せて、だから石尾さんはズボン落してパンツだけの姿を見せたんですよ! 気の毒でしょ!」
再現するお母さんの言葉に『もうやめて!』と叫びたくなる。
(俺ってなんて哀れな姿を見せたんだろう)
お父さんの頭は上がらないし、石尾は顔から火が出そうに赤いまま。
「あの、もうこの辺で」
どうやら石尾のその言葉にお父さんは縋ったらしい。
「ありがとう! いや、心の広い青年だ。凛子、いい方だな!」
ちょっと凛子ちゃんのむくれた顔が穏やかになった。
「でしょ? 健ちゃんってとってもいい人なの!」
「け、けんちゃん……」
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