決意②

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   窓が開いていた。冷たい風が入り込んでいる。 「七生ちゃん? 七生ちゃん!」  真理恵は庭に下りた。サンダルが一つ無い。見回せば分かる、その一番端に七生はしゃがんでいた。ゆっくりそばに歩いていく。背中に手をかけた。 「七生ちゃん、体に良くない。中に入ろう」 「……もういいの。赤ちゃん、生まれてもしょうがないもの。もういいの」 「甘ったれないで! それって赤ちゃんには関係無いでしょ! あなた、今はその子のお母さんなんだよ? しょうがない命なんて無いよ! 来なさい!」  さほど抵抗もなく、手を引かれて中に入った。窓を閉める。 「待ってて、あったかいの持って来るから」  温めた汁粉を入れた丼を2つの小さいお盆に載せる。お箸ではなくスプーンにした。部屋に戻って片方を七生の前に置く。 「食べよ。花くんに食べさせるわけにはいなかくなっちゃったからね、私たちが平らげないと。あ~あ、スパゲティ茹でる鍋いっぱいに作っちゃって失敗!」  七生がくすっと笑う。 「だから丼なの? どっちにしろ花、くん。そんなに食べなかったと思うんだけど」 「そうかなぁ。これ食べる顔見たかったね!」  ぽろぽろ涙を落としながら七生は笑った。 「うん、見たかった! イヤな顔しながら食べる花くんを見たかった……」  丼を下に置いた。 「こういう家庭…… 無理だった。分かってた。洋一さんが私じゃなくて組を取るの、分かってたの。でも子どもが出来たなら変わってくれるかもしれないって…… 私ね、母親になんかなれない。だって…… 道具にしようとしたんだもん。洋一さんを引き止めるための。……でも無理だった。やっぱり無理だった……」 「七生ちゃん……」 「だからね、だからね…… もう全部忘れたい。自分が良くないって思ってる。どんなにひどいこと考えてるか…… でも洋一さん無しで育てていく自信なんか無いの」 「あのね、それは七生ちゃんの決めることだよ。人を育てるってすっごく大変! 母親になるのは簡単だけど母親であり続けるって厳しいことだと私は思ってる。けど今日決めるのは間違ってると思う。ちゃんと寝て、ちゃんと食べて、それから考えて。どっちがいいなんて言わないから。ただ今日決めるのは待って」  七生は素直に頷いた。 「はい。そうします…… ありがとう」  たっぷり甘いものを食べさせて、部屋に連れて行きテレビをつけて横にならせた。 「大丈夫! 起きても牛になってないからね」  七生の切なく笑う顔を見てドアを閉めた。真理恵は廊下で声無く泣いた。  
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