ただジェイのために

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ただジェイのために

   テルからの電話で洋一と七生のことを知ったが、蓮は自分が関わるのをやめた。部下の日常に触れていくのは管理職であるべきだ。自分はもうその立場にはいない。それより今は何よりジェイを大事にしたい。  一緒に寝たことでジェイは安心したようだった。だがそう見えただけ。次の日も蓮が隣に入らないと眠らなかった。睡眠導入剤も飲んでいるのにだ。 「こわい」  そう縋るジェイを優しく宥める。 「眠ったら起きた時に俺じゃなくなっちゃうような気がする」 「そんなことあるわけ無いだろ? お前は俺を愛してるんだ、俺の知らないお前になんかならないよ」 「……そう思う?」 「思うんじゃない。分かってるんだ。そんなことにならないって」  病院に行くか? と聞いてみたがどうしても行きたくないと言う。 「病気だって言われたら…… もしそんなのが分かったら……」 「分かった。行ってみようって思えるようになったら行こう。1人でなんか行かせないから」 「うん」  そんな話を蓮の腕の中でしているといつの間にか眠る。なにも分からなくても自分の変化をどこかで感じ取っているのだろう。いつもその目に怯えが走る。蓮を目で探す。だから蓮はジェイに微笑む。そうすれば安心するのだから。 (このままじゃだめだ、壊れてしまう……) 蓮はそれを恐れていた。  金曜、店を閉めてから後を源と伴に任せて蓮は家に戻った。玄関を開けるとジェイがすぐにそばに来る。 「食事したか?」 「した」  チラッとテーブルを見る。 「この嘘つきめ。食べてないじゃないか」 「ゼリー食べたよ。あとリンゴジュース飲んだ」 「だめだ、そんなの。俺、夕飯食ってないんだ。一緒に食べよう」 「え、ご飯食べなかったの?」  抱き寄せて口づける。 「お前と食いたかったから。お前がプリンとか食べるの見ながら食おうと思ってたんだ。まさか食事サボってたなんて思わなかったぞ」 「サボりなの?」  ジェイが笑い出す。 (良かった……) 「そうさ。サボった罰だ、ご飯お代わりすること」 「……寝る前だし。そんなに食べられないよ」  意図していないのだろうが、こういう時に上目遣いになるジェイに蓮は負けてしまう。 (ずるいぞ、お前) 「じゃお代わりしなくていいよ。あああ、俺はとことんお前に甘いよな。ご飯はいい。おかずだけちゃんと食べてくれ」 「頑張る」   
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