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儀式
教会。
何かがジェイの中で湧き上がる。その正体が分からない。
「教会……?」
「そうだよ。来い」
手を差し出す。怪訝な顔で周りが見るが蓮の目にはそんなものは入らない。微笑む蓮はあくまでも断固としていて、ジェイが手を取らないなど考えていないようだ。その自信たっぷりの姿は、ジェイに眩暈にも似たものを起こさせた。
力強い大きな手に掴まり、立つ。
「あの、お客さま?」
「すみません。後でもう一度来ます」
蓮がにこりと笑ってそう言うと、釣り込まれるようにウェートレスも笑顔を返してしまった。
ソファに置いたコートを取って蓮の引くままに立ち上がる。
「ほら、風邪引くから」
向こうを向かせて、取り上げたコートを羽織らせる。
「ボタン、自分で留められるか?」
「できるよっ」
少々恥ずかしい。周りの視線が自分たちに注がれている。
「しまった、マフラーを忘れてたか」
蓮はすっと自分のマフラーを外すとジェイの首に巻いた。
「い、いいよ、自分で」
「昔っからマフラーをするの、不器用だからな。ほら、これでいい」
輪にした中に通して形を整えた。
「腕を組むか?」
「え?」
「冗談だ」
背を向けた蓮に慌ててついていこうとして振り返り、ウェートレスに頭を下げた。
「ごめんなさい。後でコーヒー飲みに来ます」
「お待ちしてます」
ところで、周囲の目が集まったのはジェイの考えているようなことが原因じゃない。いい男が2人。背の高いきりっとした男性と可愛い系のハーフの男性。目を引かないわけがない。
「待って、待ってよ蓮!」
「あ、悪い。お前が病み上がりだってこと頭から抜けていた。俺の方が足が長いからな、ゆっくり歩くよ」
「なんか…… 今の言い方、イヤミっぽい」
「どこが?」
「俺だって、足短くないからね!」
「長いとは言わないんだな」
蓮が笑う。ジェイはいつも通りぶすっとした顔になる。
「30円」
「なにが?」
「……今決めた。お前が不貞腐れたら罰金として俺に30円払うこと」
「そんなの理不尽だよ!」
「俺だから」
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