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本棚に追加遊ばれてる?
友達に囲まれている、北村遥叶。その存在感は実に華がある。
一年生から生徒会に所属。文化祭の企画や校内校則の改正などに関わり、その類まれなる才能を発揮している。彼は才色兼備の持ち主だった。
二年生の夏休み前には、次期生徒会長立候補者の他薦自薦も含め候補者演説が行われる。際立つ存在の生徒は彼以外にも少なからずいるし、立候補してくる生徒もいるであろう。
誰しもが北村遥叶という人物に一目置き、彼の放つ言葉や魅力に引き込まれているのは確かなこと。堅苦しくなく、ざっくばらんで親しみやすい遥叶は同性からも好意を持たれやすかった。
生まれ持った圧倒的な優雅さ、美。ただ彼がそこにいるだけで惹きつけられてしまう美を、北村遥叶という人間は悪意なくあちこちに振りまく。
「夜野先生どうかした?」
目を閉じている間に遥叶がやってきた。
「北村くん。頭重いから外の空気吸いにきてる」
おでこに手をやる雨汰。柔らかそうな栗色に染まる髪は手のひらで押さえつけられた。うっかり〈北村くんを見てた〉と言いそうであった。
「どれ?」
いきなり雨汰の後頭部を抱え、自分の額をくっつける奇行に出た。
「は? 北村くんっ──……」
側頭部の片側が脈打っていたものがゆっくりと下降し、今度は激しく胸を打つ。ただでさえ遥叶の整った顔面に心臓を抉られるというのに。これ以上どうしろというのだ。
小顔の中に整った鼻。
男性的なやや切れ長の目に覆いかぶさるような長いまつげ。
何よりそのぷっくりとした唇は、まるでスノーフレークのような花のごとく可憐で艶っぽい。その唇に触れてしまわないかというほど遥叶の唇が間近に迫っていた。
「俺は大丈夫、熱ないから。いつもの片頭痛だから」
「そうなの?」と遥叶は額を離した。
なるべく心臓の煽りを悟られないように「だいぶ良くなってきた」と平静を装った。
「頑張るのもいいけど、あんま根詰め過ぎんなよ」
その透明な声が雨汰の鼓膜を貫く。
「心配してくれてありがとな」
別に、と塩対応。
それよりも遥叶の胸元が気になっていた。間近で見ると鎖骨がくっきり露わになっている。俺は変態かよと思うがゲイだから仕方がないと割り切った。
(変態っちゃ、変態やけど)
「それ、ボタンはずれてるぞ」
目のやり場に困っていた件について申し立てた。
「先生、エロ」
見下すように吐き捨てる。そのまま俺をいじり倒して好きなだけ弄んでほしいのにと、受け身発想の夜野雨汰は自分の教え子に欲情する。
「第二ボタンまで外れてるんだから気になるだろ」
攻めの視線を浴び続ける雨汰の背中は汗でぐっしょりだった。
「ずっと見てたのかよ?」
「そうだけども……や、そういう意味じゃなくてさ」
「俺に欲情するとか、先生やっぱエロ」
「大人をからかうんじゃないっ」
と言ったのはこの場を逃げるためだ。仮にも惚れた男の前で変態の醜態を晒すわけにはいかないのだ。
「はい、すみません」
「はるー、帰るぞ」
一緒に居た友達に呼ばれた遥叶は「今行く」と手を上げて、再びこちらを向く。
「夜野先生、お大事に」
雨汰の耳元ギリギリに口元を寄せる。声と共に吐き出された遥叶の息が耳たぶにかかった。
(うわあああっ無理。限界値超え)
体温上昇、一気に高ぶる欲望。
教師たるもの生徒に持ってはならない感情がある。
それは恋い慕う心情と肉体を欲する欲情だ。
雨汰の抑えきれない性欲は、一番抑えられないモノを固くさせた。

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