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第8話 私、頑張るから!
「ノブ君、石田さん、お二人仲がとても良いわね......?」
二人がびっくりして後ろを振り向くと、そこには暗闇に白い着物を着て顔は白く口は大きく裂け、頭には三角の白い布を巻いた幽霊役の山田部長が立っていた。
二人は腰が抜けるかと思うくらい驚いたが時折照らす体育館の明かりが山田の幽霊姿を照らし、よく見ると幽霊メイクをしているにもかかわらず、とても美しく、石田は小声で「綺麗……」とつぶやくほどであった。
再び山田部長が二人に同じセリフを言う。
「お二人、とても仲が良いわね......?」
ノブは慌てた表情で言い返す。
「そっ...そんな事、全然ないですよ!! ねっ、石田さん!?」
そう言ってノブは石田の方を向いたが石田は少し怒った表情で『プイッ』と横を向き、照明準備に取り掛かってしまった。
ちなみにこのあと一日中、石田はノブと口をきいてくれなかった。
「山田部長、どうしたんですか? もうすぐ六年生のダンス発表ですよね? だ...大丈夫なんですか?」
ノブは石田の様子も気になりつつ山田に問いかけた。
「そうよね。間もなく六年生の発表よね。でも私は今回免除してもらったの。幽霊役でこんなメイクもしないといけないし、演劇前に全校児童の前でこの格好で踊るわけにもいかないし……。山口先生や担任の先生と相談してそうしたの……」
「そうなんですかぁぁ。び...びっくりしましたよ!! しかし山田部長、幽霊役とても似合ってますね......。あっ!!」
ノブは最後の言葉を後悔したが山田はニコッとして
「ノブ君、それは誉め言葉として受け取らせてもらうわね。ありがとう……。間もなく演劇が始まるけど照明係さんよろしくね。とても怖そうな感じが出る様によろしくお願いね?」
そう言いながら山田は後ろを向き階段を降りようとしたが再びノブの方に振り返り、先程の笑顔とは違い、とても真剣な表情でノブに話しかける。
「ノブ君、私頑張るから!! 絶対このノブ君が考えてくれた脚本を成功させるから!! ノブ君、応援よろしくねっ!!」
そう言い残し、山田は颯爽と階段を下りて行くのであった。
その山田の後ろ姿をノブはずっと眺め、石田はそのノブの姿を照明準備をしているフリをしながら見つめていた。
そのころ反対側の照明係の田中と岸本はお互いのやり方に文句を言い合い揉めていた。
「田中ぁぁぁ!! なっ...何でこの場面でこの色の照明なのよ!? 先生はこの場面は赤だと言ってたよね!? なんで青にしようと急に言い出すの!? あとで先生や部長に怒られるじゃない!!」
「いやいやいやっ!! 僕の感じではこの場面は青でしょ!? 岸本さんは全然そう思わないの? おかしいなぁ......」
「おかしいのはあんたよ!! バッカじゃないのっ!! 田中の感覚なんてどうでもいいのよ!! 私達は先生の決めた通りにやればいいのっ!!」
ノブと石田組とは対照的に田中、岸本組は最後まで劇中も揉めながら照明係をやるのであった。
そうこうしているうちに六年生のダンスも終わり、最後の演目、『演劇部』によるお芝居の準備が行われる。
そして数分後、緊張しているノブ達、演劇部部員達の心臓の鼓動が聞こえるくらいに会場は静まっていく。
いよいよ演劇部開演!!
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