4.今度は私が

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「行ってきまーす」 「行ってらっしゃい。塾終わる時間に連絡ちょうだいね」  はーいと返事をして、玄関を開ける。  あれはただの夢だったのか。それとも。  どっちかは分からないけど、結局何もなかったんだから、良しとしよう。  校門の手前で、想い人の後ろ姿を見かけた。見るだけで幸せになれる、茶色のショート。 「和桜、おはよ」  振り向いた彼女が、珍しくペコッと一礼する。 「ああ、、おはようございます」  声色が違う。表情も、言葉遣いも、何もかもが違う。  まるで、ただの部活の先輩と後輩のような距離感。 「さ、寒くなってきたわね」 「ホントですね、外でマラソン大会の練習とか辛いです。あれ、今日体育あったかな?」  スマホを出そうとした彼女が、ポケットから何かを落とす。  見覚えのある、くすんだ色の、青い切符。 「……ねえ、落としたわよ」 「あ、ありがとうございます」  友好の色のない彼女の目を覗きながら、私は全てを理解した。  ああ。そうか。  あの狼が言ってたな。  「断っても構わない。それならそれで、別の人間のところに行くだけだ」  行ったんだ。この子のもとへ。  そして彼女は消したんだ。私への想いを。
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