4.今度は私が

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 私はいつも頭が足りなくて。公式を覚えたって、赤本を捲ったって、肝心なことはこんな状況にならないと気付けなくて。  彼女はきっと、私を想ってくれてたのに、私は脅えてばかりで、踏み出すことすらできなくて。彼女も私のように苦しんで苦しんで、そして港で流したんだ。  勇気を出せば良かった。私からアプローチすれば良かった。好きって、言ってあげれば良かった。  押し寄せる、後悔と謝罪。  悩ませて、悲しませて、辛い決断をさせて、ごめんね。  和桜、ごめんね。ごめんね。  そして頭を巡る、たった一つの詮無い願い。  和桜が、5分ギリギリまで、消すかどうか迷っていたらいいな。私と同じように、悩んでくれてたらいいな。   「……えっ、どうしたんですか、文葉さん」  涙を零す私の顔を覗き込んだ彼女は、どうしようかと狼狽する。 「ごめんね、大丈夫!」  両手でパンッと頬を叩く。  大丈夫よ、和桜。今度は私が頑張る番。  卒業まで日はないけど、全力で貴女を振り向かせてみせる。  それが想いを流さなかった私にできる、一番の罪滅ぼし。 「ねえ、和桜! 今度の休み、一緒に出掛けない? チケット余っててさ!」  私はとびっきりの笑顔で、彼女が観たがっていた映画のサイトを見せた。  <了>
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