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「うー、寒くなってきたなあ」
「この前の雨で一気にだよね」
縮こまる白帆。私より数センチ低い、160もない彼女が、余計に小さく、可愛らしく見える。
白のカーディガンの上にベージュのマウンテンパーカー、ダークブラウンのスカートにはホワイトのドット。秋色コーデに包まれながら、彼女はペットボトルのレモンティーに口をつけた。
「そうそう、ふーさん、あれ行きません? 『白と嘆きの花束』、すっごい泣けるらしいですよ」
「あ、いいね、気になってた! あそこのシネマでやってるよね?」
他愛もない話が楽しい。まるで学年も越えた親友のよう。
「いやあ、秋は過ごしやすくて最高ですね! アタシ、一番この季節が好きです」
クスクス笑いながら、鼻歌を鳴らす。機嫌が良いときに奏でる、曲名も知らない歌。
「あ、次の時間、移動教室だ! アタシ、先に出ますね!」
「ん、行ってら。私はもう少しここいるよ」
「じゃあまたっ」
混雑を避けるために遅めに来た人を華麗によけながら、彼女は出口へ向かっていった。
「『白と嘆きの花束』、と」
スマホで上映時間を調べる。じわじわヒットしている悲恋もの。
口を結んで項垂れる私を慰めるように、嘲笑うように、後ろの窓を風が叩いた。
和桜とこれを見に行くのか。運命ってのはどうにも悪趣味で、厄介で。
まるで学年も越えた親友のように見える私達だけど、私は彼女をそんな風には見られない。
恋愛感情抜きでは、彼女を見られない。
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