1.運命ってのはどうにも悪趣味で、厄介で

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 何かの弾みで秘密が漏れたら、私を抜いた友達同士がグループトークで下卑たネタにするのは想像に難くない。好奇心のアンプで、噂話という名のスピーカーは誰彼構わずあることないこと吐き出すだろう。  それくらいなら耐えられる。あと5ヶ月で卒業だ。  怖いのは、和桜。  彼女に困った顔をされたら。対応を面倒がられたら。距離を置かれたら。自分が一歩進んで相手が四歩下がるくらいなら、今の関係でいいじゃないか。今だって楽しいんだし、特別なことを求めなくたっていいじゃないか。  そんなこと、奥底じゃ思ってないくせに。 「…………ふっ…………うう…………」  毛布を顔に当て、声が漏れないようにし、必死に涙を吸わせる。  誰よりも近づきたいのに、受け入れてもらえる確証もないままに飛び込むことが出来ない。  日和見と打算を知ってしまった自分が、まっすぐにぶつかれない自分が、やけに卑しく思えて、嫌になってくる。 「映画、この時間でいいかな? あ、でも、もし友達からも誘われてたりしたら、そっちで行っていいんだからねー!」  優しい先輩の仮面を被って画面ショットを送る。  気遣いに見せかけた、確認。自分を選んでくれるといいなと願いを込めた、勝率の高そうな賭け。 「……やだな」  こんなときでも彼女からの幸せな返事を期待する自分が、繋がりたいと思っている自分が、やけに幼く思えて、心底嫌いになっていく。
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