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「ハルがいい子過ぎる」
なんであんなに人をぶんぶん振り回す姉の下にこんな人間のできた弟が育つんだとハルのことを気に入っているルキは、本当にうちにおいでと誘う。
「ルキが弟君にたらし込まれてる」
レインはそんなルキの様子に苦笑しつつ、優秀な人材が来て欲しい点には同意する。
「ハル君そろそろ休憩時間だよね、よかったら一緒にお昼どう? お姉さんの婚約者が奢ってくれるって」
「俺が払うのかよ」
いいけどと言ってルキもハルを昼食にさそうが、
「ありがたいお話ですが、昼食持参してますので」
ぜひ今度ご一緒させてくださいとハルは丁重に断った。
「へぇ、今は閉寮期間中だろ? わざわざ自宅から持ってきてるのか?」
「ええ、基本的に自炊してまして」
今日はサンドイッチですとハルはランチの内容を明かす。
「ハルが作るのか?」
ベルもよく屋敷で自ら調理しているが、本当にストラル伯爵家の人間は貴族らしくないなとルキは思う。
「その方が女の子からのお誘いを断る時角が立ちませんから」
僕、その辺の子女よりよっぽど料理できますよ? と自慢げに語るハルを見て、
「…………苦労してるんだな」
と押し付けられた手料理に怖い思いをした事があるルキは同類を見つけたように歓喜と同情の眼差しをハルに送る。
「いえ、別に。僕は恋愛にリソース割くタイプじゃないんですけど、女の子と遊ぶのは嫌いではないので」
が、ハルは笑ってそういった。
「…………刺されないようにな」
「その辺は気をつけてます。みんなの愛すべきハル君の間は大丈夫かと」
にこにこにこにこと笑うハルには自分にはない処世術と逞しさとメンタルの強さがあるらしいと悟り、ルキはやはり間違いなくベルの弟だなと納得した。
「あ、そうだ。僕もルキ様に聞きたいことがあったんですけど」
休憩中なら雑談しても? とハルは尋ねる。
「答えられることなら構わないよ」
とルキが言ったので、
「姉にアクセサリーをプレゼントしようと思ってるんですけど、髪飾り贈る予定あります?」
ルキ様と被るなら別のモノにしようかなってとハルはにこやかに尋ねた。
「ないけど、それがどうかしたか?」
そもそもベルにプレゼントをする予定がないなと首を傾げるルキに、
「良かった。もうすぐ姉の20歳の誕生日なので、ちょっといつもより特別なものの方が良いかなって」
今年はバイト代期待できるし、とハルは嬉しそうに語る。
「誕生日……なのか」
そのワードに驚くルキに気にする様子もなく、
「ええ、今月の25日なんです。やっぱり僕はバレッタにしようかな。姉は寒色系の色が好きなのでよくその系統の服を着てますし。それに似合うやつを選びに行こうと思います」
ハルはベル情報をルキに提供していく。
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