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第1章 現実世界編 第1話 初恋の人が死んだ?
ピピ ピピ ピピ ピピピ ピピピ ピピピピピ……
「うーーーん……もう朝かよ?」
俺の名は『五十鈴隆』四十九歳の独身
現在はリストラにあい、『失業中』の冴えない中年だ。
高齢の両親と同居しているのだが、未だ結婚もせずに孫の顔も見せてやれていない俺は、物凄く申し訳がないと思っている。
まして現在は失業中の引きこもり中......
俺は三人兄弟の長男で弟や妹はとうの昔に結婚もして子供もいる。
だから両親は一応俺には『五十鈴家の跡取りはいるからお前は気にし無くていい』とは言ってくれているが、きっと昔の人達だから、長の俺が結婚をしていない今の状況は親としてはとても心配だろう。
順番からすれば両親が先に死に俺だけがポツンと一人、残ってしまう形になるんだからな。
親として子供の将来を心配するのは当然だが、心配される理由が悲し過ぎる。
親にそう思わせている俺は本当に『親不孝者』だと思っている。
別に今まで結婚したくないと思ってここまで来た訳ではない。
過去には付き合っていた女性だっていたのだ。でも……
でも、俺はいざとなると持ち前の『臆病』な性格が出てしまい、『プロポーズ』するまでに至らなかった。
昔からそうなんだ。
俺は自分に全然自信が持てなかった。
いざとなったら何も出来ない男だ。
だから今回、こんな性格が原因となり、俺はリストラの対象になったのだと思う。
年齢的に現場の責任者を任せられたが、部下達との信頼関係を築けず、責任者として、しっかりとした指示も出来ず、挙句の果てに部下の一人が作業中に大怪我をしてしまった。
その責任を俺がとる事になり、まずは責任者から外され、数年後には会社の業績が悪くなると待ってましたとばかりに俺はリストラ対象者の一人になってしまったのだ。
最初は頭にきたが冷静になって考えてみると、今までの自分の行動、言動などが原因でこうなってしまったと今は反省している。
まぁ、後の祭りではあるが......
「うっ!! 頭が痛い……」
最近、頭痛がよく起こる。
それもかなりの激痛だ。
前までは一ヶ月に一回程度の頭痛だったが、退職後は一週間に一度、最近は毎日一回はこの様な頭痛が起こる。
何かヤバイ病気なのか?
一度、病院に行くべきか?
でも病院に行って治療して治ったからといって、今の俺の生活…人生が変わる訳ではない。
それならいっその事、このまま病気で死んでしまった方が楽なんじゃないのか?
両親もその方が心配の種が無くなり良いんじゃないのか?
ついついそう思ってしまう『ダメ人間』な俺である。
ピンポーーーーーーーン ピンポーーーーーーーン
「はーい」
家に誰か来た様だが母さんが出てくれるからいいか。
それに今の俺の状態をあまり他人に見られたくもないしな。
「隆~っ!! チョット降りて来て~っ!!」
かっ…母さん、何故俺を呼ぶんだよ?
俺は人に会いたくないんだよ……頭も痛いしさ……
しかし俺は今の立場で母親の言う事を無視するわけにはいかないので、仕方なく母親のいる部屋に行った。
すると、部屋には見た事のある女の人がいた。
『鎌田志保』、俺よりも一回り上の六十一歳で俺が通っていた小、中学校の先輩でもある人だ。
「おはよう、隆君」
「おはようございます、志保さん……」
志保さんは喪服を着ていた。今から誰かの『告別式』にでも行くのだろうか?
「志保さん、今から『告別式』に行かれるんですか?」
「そうなのよ。私が幼稚園の保母さんをやっている時の先輩でね、もしかしたら隆君が幼稚園生だった頃の先生かもしれないなぁと思って、一応、聞いておこうかと思って……」
「そ、そうなんですか……? で、お名前は何と言うんですか?」
「名前はね、『山本香織』って言うんだけど、隆君知ってるかな?」
「山本香織……? うーん、知りませんね。それにもう何十年も前の事ですしねぇ……」
俺は素っ気ない態度で志保さんにそう言うと会釈をして自分の部屋に戻ろうとした。
すると志保さんが突然大きな声を出した。
「あっ!! ゴメンゴメン、隆君!! 山本って今の名前だわ。旧姓は『常谷香織』だったわ!! でもまぁ、隆君には昔の事で覚えていないんだろうけど……」
「『常谷香織』……『つねたにかおり』……『つねちゃん』……!?」
うっ!! 頭が痛い……
この痛みはいつもの痛みと、そして『常谷香織』という人を思い出し、そして亡くなったというショックが合わさった痛みの様だった……
常谷香織先生……
思い出した......
というか何故、今まで忘れていたんだ......
つねちゃん......
つねちゃんは俺の『初恋』の人だった……
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